どうも、ナツダです。
今回は、不動産の共有持分の売却について解説してみたいと思います。
では、さっそくいってみましょう。
共有持分の不動産は売れるのか?同意はいる?
不動産を共同所有している場合、売るときや家を建て替えるとき全所有者の合意がいるのでしょうか?
この答は「はい」です。
共同所有している不動産は、所有者全員の合意がないと以下のことができません。(民法251条)
- 共同所有の不動産で全員の合意がないとできないことの例
- ・土地の分筆(登記上、土地を分ける)
- ・家の解体
- ・大規模改修や建替
- ・新築
- ・不動産の売却
共同所有の土地は全員の合意がないと売れません。
でも、自分の所有権(共有持分)だけを売ることは可能です。(民法206条)
民法251条と206条について、説明しますね。
- 民法251条とは?
- 共有物の管理方法についての規定。各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
- 民法206条とは?
- 所有権の制限と、その権利内容について規定。所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
共有している不動産全部を売る場合は、共有者全員の同意が必要です。
各自の共有持分だけ売るときは、他の共有者から承諾をもらわなくていいのです。
ただし、独断で売ることも家を建てることもできないような不動産の所有権だけを買ってくれる人はほとんどいません。
もし、どうしても共有持分を売りたいのであれば、共有持分を専門に買取している不動産業者に依頼するのが早いでしょう。
共有持分を売却するときの適正価格は?
もし、共有持分だけ売りたいとなったら、いくらぐらいで売れるのでしょうか?
じつは、共有持分を一般市場で売却すると、市場価格の7割~8割になると言われています。
共有持分の売却価格は、実例が少ないので評価しにくいのだとか・・・。
一応、競売価格や相続税路線価が参考にされるようです。
- 競売価格とは?
- 住宅ローンを長期滞納すると、金融機関が債権を回収するために不動産を競売にかけて売る。競売物件の価格は市場価格の7割ぐらいと言われている。
- 相続税路線価とは?
- 相続税や贈与税を算定する際の基準となる路線価のこと。宅地が面する道路(路線)に設定された標準的な価格(路線価)を基準に評価する。市場価格の8割ぐらい。
これだけ売却額が低くなるのは、共有持分だけ買い取っても独断で不動産を処分できないからですね。
共有持分の不動産を売却した場合の税金は?
さて、共同所有の不動産を売った場合、税金はどうなると思いますか?
共同所有の不動産であっても、所得税の計算方法や税率は基本的に所有者が一人のときと同じです。
所得税の計算方法や税率については、こちらで詳しく解説してます。
参考にどうぞ。
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マイホーム(自分が居住している家)を売った場合、譲渡所得は特別控除の特例により3,000万円まで無税になります。
この「3000万円控除」は、所有者ひとりひとりに適用されます。
ただし、以下のことに対して注意が必要です。
自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。
つまり、土地だけの場合は控除の対象外となるのです。
図解であらわすと、以下のようになります。
図のとおり、土地しか所有していない場合は控除の対象外となります。
ただし、土地だけ所有(共有または単独所有)している人が建物の所有者と生計をひとつにする同居親族であれば、建物の所有者から控除し切れなかった残額分に限りこの特例を適用することができます。
共有持分を売却した場合の税金はどうなる?
不動産ではなく、共有持分だけ売却した場合の所得税はどうなるでしょうか?
共有持分を有償で譲渡した際に譲渡益が生じると、譲渡をした者には譲渡所得税(約20%)がかかります。
譲渡をする場合、いくらで売却するかがポイントとなりますが、この譲渡金額が時価より著しく低い場合、譲渡所得税のほかに贈与税もかかる可能性があるので注意が必要です。
つまり、これも基本的な不動産売買と同じ考え方でいいということです。
住宅ローンが残っている不動産の共有持分はどうなる?
共働きの夫婦が連帯債務で家を買うことって、よくあります。
では、もしこの夫婦が離婚することになったら、共有持分はどうなるのでしょうか?
離婚する夫婦が家や土地の共有持分を考えるときは、大雑把に言うと2つのパターンに分けて検討する必要があります。
- 家を売って住宅ローンが完済できる場合
- 家を売っても住宅ローンが完済できない場合
さっそく、それぞれのパターンごとにみてみましょう。
なお、話しを簡単にするため便宜上不動産以外の財産や売却費用を無視します。
1、家を売って住宅ローンが完済できる場合
不動産を売り住宅ローンが完済できる場合は、残ったお金を夫婦二人で分けることになります。
この場合、夫婦の共有持分比率に関係なく、基本的に残ったお金を半々で分けます。
- 住宅ローンを完済できる場合
- 3,000万円の家を夫2,400万円、妻600万円の住宅ローンを組み購入。
つまり、持分比率は「夫:妻 = 8:2」 - 25年後、夫婦は離婚することに…。
住宅ローン残債:1,000万円
不動産の売却額:1,200万円
差し引き:200万円が手元に残る - 離婚による資産分割は夫婦半々が基本!よって…。
夫の取り分:100万円
妻の取り分:100万円
家を売って住宅ローンを返せる場合は、離婚するときに売ってしまって住宅ローン返したうえで残った財産を分けることが多いようです。
結婚後に夫婦共同で築いた財産は、持分比率に関わらず半分ずつ分けるのが基本。
上の例の場合の妻は、最後に残った200万円のうち100万円をもらう権利があります。
家を売って住宅ローンが完済できない場合
家を売り住宅ローンが完済できない場合は「不動産の価値がない=財産ゼロ」ということなので、資産分割はおこなわれません。
- 住宅ローンを完済できない場合
- 住宅ローン残債が1,500万円あるが売っても1,000万円にしかならない…。
⇒ 売っても住宅ローンが500万円残る。
⇒ 資産分割は、おこなわれない。 - 次のような主張は通らない。
夫「残りの住宅ローンの債務を折半にしてほしい!」
妻「住宅ローンの連帯債務から抜けたい!」 - 住宅ローンは銀行と取り決めた契約なので、離婚後も夫婦それぞれの債務が継続する。
住宅ローンの残債は財産分与の対象にならず、ローンを組んだ名義人や保証人はそのまま責任を負うことになります。
この場合は残った住宅ローンを誰がどのように返していくか協議して、どうしても返せなければ破産などの方法を検討することになります。
共有持分だけ売ろうと思っても、まず買う人はいません。
不動産持分の売却では、素人だけで話し合っても解決できないケースが多いです。
できるだけ早めに弁護士や専門の不動産屋に相談する方が無難です。
まとめ
ひとつの不動産を複数人が共同所有している場合、それぞれの所有権割合のことを「共有持分」といいます。
共同所有している不動産は、所有者全員の同意がないと分筆や売却ができません。
ただし、共有持分だけを売ることはできます。
ただし、不動産の所有権の一部だけを買ってくれる人はほとんどいません。
どうしても売りたいなら、共有持分売却専門の不動産屋に依頼するのがいいでしょう。